■ 阿波和三盆は、なぜ “特別な甘さ” を生むのか
とろける記憶に使用している阿波和三盆は、単なる砂糖ではありません。
その背景には、江戸時代から続く手仕事の技術と、冬の寒さを利用した季節限定の製法があります。
和三盆の原料となる竹糖は、現代の一般的な砂糖とは異なり、
香り・旨み・キレの良さが際立った希少な砂糖黍。
その魅力を最大限に引き出すため、製造には驚くほどの時間と手間がかけられています。
■ ① 粗糖を“白下糖”へ ― 冬の窯場から始まる砂糖づくり
砂糖黍を絞る作業(締場)は、毎年12月から2月までの限られた時期だけ。
まだ夜が明けない早朝4時から作業が始まり、短い冬の間にすべてを搾り切らねば品質を保てません。
搾られた汁は「荒釜」で徹底的にあくを抜き、
澄まし桶で泥や砂を沈殿分離。
中釜・上げ釜へと移り、温度計も糖度計も使わず、職人の勘だけで煮詰め具合を見極めるという、まさに匠の技で仕上げられます。
煮詰めた砂糖を「冷し釜」で撹拌しながらゆっくり冷却することで、
均一で美しい結晶が生まれます。
こうして姿を現すのが、半固形状態の“白下糖”です。

■ ② 「荒がけ」と「研ぎ」 ― 和三盆最大の特徴である手仕事の精製
白下糖に含まれる糖蜜を抜く工程が、和三盆の味を決定づけます。
まず「荒がけ」で一晩ゆっくり圧力をかけ糖蜜を搾り取る。
ここまではまだ序章。
最も重要なのが、和三盆最大の特徴である精製工程――**「研ぎ」**です。
白下糖に手水を加え、丁寧に練り込み、再び麻袋に入れて絞る。
これを4〜5回繰り返すことで、砂糖は次第に白く、純度が高まり、
竹糖本来の上品な風味だけが静かに残されていきます。
研ぎは気温・湿度・砂糖の性質を読み解く必要があり、
熟練の職人しか扱えない繊細な作業。
今ではこの伝統的な研ぎを手作業で行う工房は非常に少なくなりました。

■ ③ 最終工程は日陰干し ― 手間が味を育てる
研ぎを終えた和三盆はふるいにかけられ、その日のうちに乾燥へ。
日陰の風通しが良い二階で蚕棚のように広げられ、ゆっくりと水分を飛ばします。
和三盆は非常に湿気を吸いやすく、管理を間違えるとすぐに発酵臭が出たりカビが生えるほどデリケート。
この繊細さも、他の砂糖とは違う“生きた素材”である証です。
■ とろける記憶がこの和三盆を選んだ理由

これだけの手間をかけて作られた和三盆は、
ただ甘いだけの砂糖ではありません。
● すっと消えていく“キレの良い甘さ”
● 舌にまとわりつかず、香りだけが余韻として残る繊細さ
● 素材を邪魔せず引き立てる上品な旨み
この特徴こそが、「とろける記憶」の理想の味わいと完全に一致していました。
とろける記憶では、和三盆の個性を最大限に生かすため、
今田養鶏場の臭みのない卵を合わせ、70個ずつ丁寧に手仕事で製造しています。
プリンを一口含んだ瞬間、甘みがふわりと広がり、
すっと消える――。
この独特の“とろけ方”は、和三盆だからこそ実現できる食感です。
■ 手仕事と歴史を味わうプリン

とろける記憶は、
「大切な人に贈りたいプリン」を目指して生まれました。
職人が冬の寒さを相手にしながら作り上げた和三盆。
その味を守るために、プリンの製造もあえて少量生産に。
どの工程も、効率より“品質”を優先しています。
この背景を知れば知るほど、
一つのプリンを味わうことが、
文化を味わう体験へと変わっていきます。
■ まとめ:とろける記憶は「和三盆の物語」を閉じ込めたスイーツ

阿波和三盆は、
・冬だけ作れる
・職人の勘で仕上がる
・4〜5回の研ぎで甘さを磨く
・湿気で品質が変わるほどデリケート
これほどまでに手間をかけて生まれた砂糖は、世界でも稀です。
とろける記憶は、
その希少価値ある和三盆が持つ“気品ある甘さ”を最大限に活かし、
“心がほどけるプリン”として仕上げています。
一口ごとに広がる至福の瞬間を、
ぜひ大切な方と分かち合っていただければと思います。

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